海外出張を終え、今朝会社に出勤したところ、上司から呼び出しがかかった。
個室に案内され、そこで待っていたのは部長だった。「む、これはついにきたか?」
前々から噂はあって今の課を分割して北米を独立させる計画があると聞いていた。
オレがその課長席に適任だろう、オレが誰よりも北米市場に精通しているのだから。
そう思っていたのだが、部長の口から出たのは想定外の内示であった。
「りひと君、君は4.1から○○課の課長に昇進だよ」
えっ?と思った。正直管理職に昇格出来るという嬉しさよりも北米市場から離れることのショックの方がデカかった。
北米にはかれこれ10年近く関わってきたからだ。なぜ、オレを上にあげないのかー…
腑に落ちない気持ちのまま、取り敢えず部長の話に耳を傾けた。
部長からはなぜオレが○○課の課長なのかについて説明してくれた。
「今後の事業拡大に伴い、様々な重要投資案件が出てくる。それを社内社外巻き込んで仕上げるためには海千山千の交渉を乗り越えてきた君しかできない」
こんな感じの説明だった。
まぁ、オレも隣の課で○○課が今後ますます重要になることは分かっていたから、部長の言ってることは理解できる。
しかし、北米はどうなる。これまで育て上げてきた北米は!
後任人事が心配だったので、聞いてみた。もちろんオレの後釜はちゃんと考えてある。
後任者を聞いて「なるほど」と思った。彼ならやり切れるかもしれんとも思ったが、そんな簡単にオレが積み上げてきたことを引き継げるわけもない。時間がかかるだろう。
オレはオレで新しい職務、仕事を回していかねばならないだろうし、どこまで引き継ぎに時間を割けるのやら。
まぁ、最初は納得の行かない人事であったが、オレも北米に10年と長い時間をかけてやらせてもらってきた。
これから北米市場は大変革の時代を迎えるのであと数年は関わりたかったが、また別の角度から北米に関わることになる。
それもまた一興。
4月からは部下の数が飛躍的に増える。今は2名の部下とオレとで仕事を回してきたが、いよいよオレもプレーヤーからマネージャーになる。
役割ががらりと変わるわけだ。部下のマネージメントも重要な仕事になる。
まずは部下との信頼関係を作っていくことが重要になるのだろう。
男45歳。あと10年は働きたいので、管理職としてのキャリアを積んでいきたい。今回の昇格は前向きに捉えて次のステージに進んでいく。
おわり