真実に向かおうとする意志

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ジョジョの奇妙な冒険シリーズ、私は第5部のイタリア編が最も好きです。

少年ジャンプで連載されたのがちょうど1995年から1999年と私の高校、大学時代とかぶっており、当時単行本も買ってたくらいでしたからよほど好きだったのでしょう。大学卒業の頃に金がなくて古本屋に売ってしまったことか悔やまれます。

第5部の舞台は2001年のイタリア。主人公ジョルノ・ジョバーナ(ディオの息子)がギャング抗争に身を投じ、麻薬を駆逐するためにギャングのボスを目指すストーリーです。

少年に麻薬を売りつけるようなギャングは許せない。麻薬をを街から一掃するためには自分がギャングになって組織のボスになるしかない。これがジョルノがギャングの世界に身を投じた理由であり、そうさせたのは彼の心にある「正義の心」なのです。

ジョルノは新入りとしてブチャラティのチームに加わることになります。メンバーにはアバッキオ、ミスタ、フーゴ、ナランチャの4人がおり、全員がスタンド使いです。

ブチャラティ率いるスタンドチームはある日重大な指令をボスから受けることになります。ボスには隠し子が存在したことがわかったというのです。名はトリッシュ。

彼女を狙う組織の裏切り者(同じくスタンド使い)から彼女を護衛しつつ、無事に彼女をボスの元に送り届けることが任務としてブチャラティに与えられます。そして追ってくる敵スタンドチームとのし烈な戦いが始まります。

主人公のジョルノもブチャラティもかっこいいし大好きなキャラなのですが、私はなぜか脇役のレオーネ・アバッキオが好きでした。ブチャラティへの強い信頼と忠誠心、任務をやり遂げる強い意思、そして彼が警官を志した理由でもある「正義の心」に打たれました。

作中、アバッキオの過去が描かれます。ギャングになる前、アバッキオは市民を守るよき警官でした。が、徐々に社会の矛盾を感じ始め、やがて自身も犯罪者から賄賂を受けとるような悪徳警官になってしまいます。

そんなある日、アバッキオは同僚の警官と二人で犯罪現場に突入する任務中に賄賂を受けていた相手と鉢合わせしてしまい、逮捕に躊躇したアバッキオのせいで同僚の警官は殉職したのでした。

アバッキオは消えることのない重い十字架を一生背負うこととなり、やがて身も心も暗黒に落ちていきます。警官も辞めて自暴自棄になっていた彼はその後ブチャラティの勧誘によりギャングに身を落とすことになります(そしてスタンド使いとして能力に目覚める)。

ギャングになったアバッキオですが、猜疑心が強く、言動も荒っぽい荒くれ者ですが、彼の心の底には警官になった頃に抱いていた「正義の心」が生き続けているのでした。

チームリーダーであり、自分をどん底から救ってくれたブチャラティへの忠誠と信頼は凄まじいもので、任務遂行のためというよりもブチャラティのために自分の命を犠牲にしても任務を全うするのです。

ブチャラティがボスを裏切った時もアバッキオが真っ先にブチャラティとともに組織を抜けることを表明しています。このことからもブチャラティへの絶大な信頼が伺い知れます。ブチャラティからすればなんて心強いでしょう。

ボスを裏切ったブチャラティ一行はボスの重要な手がかりをつかむべく、ボスの生まれ故郷のサルディニア島にわたります。そこでボスの容姿を再現するべく、アバッキオのスタンド「ムーディ・ブルース」が活躍するのですが、それを阻止するために同じく島に渡っていたボスに抹殺されてしまいます。

そして私がこの作品でもっとも感動し心を震わせたシーンがやってきます。

死んだはずのアバッキオがどこかのレストランで昼食のパスタを食べている。テーブルの下からガチャガチャとガラス瓶の破片の音がする。そこには殺人事件の捜査のため地道な指紋取りの作業をしている警官がいるのです。

アバッキオは警官に問いかけます。あんたはどう思ってそんな苦労をしょいこんでいるんだい?と。

そうだな・・・私は「結果」だけを求めてはいない。「結果」だけを求めていると人は近道をしたがるものだ・・・。近道した時真実を見失うかもしれない。やる気もしだいに失せていく。

大切なのは「真実に向かおうとする意思」だと思っている。向かおうとする意思さえあればたとえ今回は犯人が逃げたとしてもいつかはたどり着くだろう?向かっているわけだからな・・・違うかい?

忘れたのかアバッキオ?おまえはあれに乗ってここに来たのだ。ここは終点なんだ・・・もう戻ることはできない。

アバッキオ おまえはりっぱにやったのだ。そう、わたしが誇りにおもうくらいりっぱにね・・・・

私も立派に生きて後のものに意志を託したい。

まぁ、漫画だけの世界なんですけどね。アバッキオの生き様、死に様は私の憧れであり続けるでしょう。

おわり