マッサージ嬢との会話で見えてきた人手不足

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私はマッサージが好きでちょくちょく利用する。昨日も2週間ぶりに90分のコースを受けてきた。

人にも依ると思うが、私はどちらかというと施術中は会話したくない。黙って筋肉がほぐされていく快楽に身を委ねたい派である。

だが、どういうわけか今回の嬢はこんなくたびれたおじさんに積極的に話しかけて話題をふってくるのだ。

年は聞いてないがまだ若い方で、多分二十代前半だと思う。

けっこう大っぴらにプライベートなことをガンガンしゃべってくるので、しょうしょう戸惑いつつも若い女性との会話をどこか楽しんでいる自分もいることに気付く。

嬢はおしゃべりが大好きな方なんだろうが、私なんかに積極的に会話を仕掛ける動機が何かを少し考えてみた。

<可能性その壱>

私がダンディーなおじ様だから。若い男性にはない大人の色気を出していて、私とお近づきになりたい。一番可能性は低そうだが…。妄想は自由ということで。

<可能性その弐>

長い沈黙に耐えられない。一日中客の体をもみほぐしてその間沈黙というのはひょっとしたら非常に辛いことなのかもしれない。薄暗い施術室でずっとサイレント。私は90分だが、嬢は一日中だから無理もない。

<可能性その参>

自分のファンを増やして収入アップ。聞くとマッサージはほぼ歩合制なのだとか。お店に客が来て施術してなんぼの世界。指名してくれたら確実に稼げるから若さを武器におじさんをまた店に来させるテクニックが会話ということになるか。

まぁ、<その壱>は冗談として、<その弐>と<その参>が有力だ。

それにしてもマッサージの料金は一昔前に比べたら随分安くなったものだ。

私が社会人になって上京した2003年頃だと相場は10分で1000円だったと記憶している。それが今だとだいたい1時間で3000円。つまりほぼ半分になっちゃったということ。

デフレの影響をもっとも受けた業界のひとつといっていいだろう。

それまでの2倍の仕事をこなしてトントンなのだから単価が半分になるというのは凄まじい競争だ。私の会社であれば確実に赤字で倒産する。

今や街の至るところにマッサージの看板を目にする。過当競争気味だ。利用者にとってはお値頃だが、経営者やスタッフは大変だ。

嬢曰く、マッサージ料金のだいたい半分が嬢の取り分なんだとか。90分の利用で約4500円だったから2250円は嬢の懐に入ったに違いない。時給にするとちょうど1500円という計算になる。

こうみると意外と悪くはないな。コンビニより全然いいじゃないか。

人気嬢にもなれば、ひょっとしたら独立することも夢ではない。顧客ごとごっそり持っていけるので、経営はすぐに軌道になるだろう。お店からの搾取もないわけで今よりもっと儲かるかもしれない(実際は店舗賃料とか色々経費がかかるけど)。

実際、マッサージスタッフは人の入れ替わりが激しいらしい。先日もベテランスタッフが独立のためやめっちゃったのだとか。嬢がぼやいてた。

土曜日の昼下がりだというのにワンオペだったから、飛び入りで来る客や予約の電話を断っていた。

マッサージ業界も人手不足の波が押し寄せているようだ。特に若い人材が集まらないらしく、人手不足を理由に同業者でお店閉める人も出てきているそうだ。

マッサージを受けながらこんな田舎の片隅でも人手不足の影響が出ているのかと、人口減少社会の片鱗を感じたのだった。

おわり