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グローバルインバランスの代償を誰が支払うのか

― 輸出大国・日本が直面する「ツケ」の現実 ―

私たちはこれまで「グローバル化は正義だ」と信じてきた。

自由貿易、グローバルサプライチェーン、通貨政策を駆使しながら、輸出で稼ぎ、国を豊かにする。

たしかに、それはある時期までは「成功モデル」だった。日本もドイツも、その恩恵を受けてきた国の代表格である。

しかし今、「グローバル・インバランス(世界的な経常収支の歪み)」という構造的問題が改めて注目され、世界はその修正に向かって舵を切り始めている。

そしてその波は、静かに、しかし確実に私たちの暮らしを直撃しつつある。

グローバル化が生んだ不均衡な世界

国際経済における「グローバルインバランス」とは、経常黒字国(輸出過多)と経常赤字国(輸入過多)の構造的な不均衡を指す。

日本、ドイツ、中国といった輸出大国が長年黒字を続ける一方で、アメリカなどの国々は膨大な貿易赤字を抱えてきた。

この不均衡こそが、2000年代以降のグローバル経済の核心的な問題であり、2008年のリーマンショックの一因ともなった。

そしてそれは今なお続いている。

得をしたのは誰だったのか?

日本もドイツも、黒字を稼ぐことには成功した。

だが、その果実は平等に分配されただろうか?

答えは否である。

実際には、企業の利益率は上がり、株主配当も伸びた一方で、労働者の取り分である「労働分配率」は下がり続けている

大企業は海外移転と人件費圧縮でコスト競争に勝ち残った。 株主は配当で潤った。 だが、非正規労働者や中小企業の下請けはどうだったか? 実質賃金は上がらず、雇用の安定も得られなかった。

グローバル化の恩恵は、ほんの一部の勝者だけのものだった。

トランプの「通商戦争」は何を意味したか

トランプ政権の強硬な通商政策、とくに対中・対独・対日への関税措置は「保護主義」として批判された。

だが、もう少し踏み込んで見ると、これはグローバルインバランスの是正を狙ったものだったと言える。

アメリカの労働者は言った。

「自由貿易のせいで工場が閉鎖された。雇用が奪われた。自分たちの暮らしが破壊された」と。

トランプはそこに応えたのだ。

彼の政策は、赤字国としてのアメリカから見た「歪みの是正」だった。

そして今、日本にも「ツケ」が回ってきている

グローバル化によって輸出大国としての地位を築いた日本。

だが、その恩恵を国内でうまく分配できなかったことが、今になって深刻なかたちで跳ね返ってきている。

  • 長期的な賃金停滞
  • 非正規雇用の増加
  • 若年層の将来不安
  • 国内市場の疲弊
  • 少子化

加えて、米中対立の激化や保護主義の台頭は、外需頼みの日本経済にとって逆風でしかない。

サプライチェーンが再編されれば、輸出産業が構造的に縮小する可能性すらある。

終わりに 〜構造を変える時〜

今の日本が直面しているのは、「グローバル化という成功体験からの脱却」である。

過去のモデルが機能しなくなった今、次に必要なのは持続可能な内需の構築と、真の意味での分配の見直しではないだろうか。

グローバルインバランスの是正は、世界のために必要なことかもしれない。

だがその代償を、最も弱い立場の労働者に負わせるような社会であってはならない。

長年のツケをどう清算し、次の時代をどう設計していくか。

その問いは、私たち自身に突きつけられている。

本ブログ記事は文藝春秋のYouTubeチャンネルでの中野剛志氏との対談から着想を得て書きました。元ネタの動画はこちら

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