亡くなった伯父さんには昔からお世話になった。子供の頃は家族でよく九州まで遊びにいって泊まらせてもらった。
それに貧乏学生だった頃にはたくさんの経済的な支援も頂いた。伯父さんの方に足を向けて寝れない。
6年ぶりに会った伯父さんは棺にドライアイスと一緒に納められていた。
思ったほどやつれていなかった。抗がん剤治療がうまくいっていたらしく、体重も戻りつつあったのだろう。
週一で診療医として近所の病院でバイトもしていたし、もはや杖を使わなくても近所を散歩することもできたというから体力は戻っていたんだと思う。
眠っている顔も生前の伯父さんらしく眉間にシワを寄せていて少しご機嫌が斜めのようだった。
死に際の様子を従姉妹から聞いたが、死因は大動脈瘤破裂ではなく、大動脈乖離だったという。ガンの治療でCTを取っていたから動脈瘤が無いことは確認していたらしい。
だが、抗がん剤の副作用というのは血管を痛めつけるらしく、想像以上に伯父さんの血管は老化が進んでいたみたいだった。
血圧が高く、降圧剤が処方されていたが、娘の話ではキチンと飲んでいなかったらしい。
高血圧と心疾患は高い相関性があるのは素人でもわかるものだが、医者であるがゆえなのか、医者の不養生とでもいうのか。自らの判断で薬量を管理して担当医の言うことを聞かなかったみたいだ。
ガンとの戦いに勝てそうな勢いで治療が順調に進んでいたのに、結果としてガン以外の疾患で足元をすくわれた。
ガンの進行を食い止め、あと数年は生き長らえたはずなのに、残念だ。
享年72歳。無念だったに違いない。死んでしまう前に会いたかった。今更言ってもせんなきことではあるが。
近い親類だけの小さな小さな葬儀だった。伯父さんらしいと言えば伯父さんらしい。
最後のお別れは棺を花で一杯にして見送った。
伯父さん、ありがとう。またあの世で話の続きを聞かせて下さい。
おわり